油圧リヤディスクブレーキの場合、てこの原理を用いてリヤブレーキペダルを踏む力の数倍の力をマスターシリンダーに伝えています。また、ブレーキキャリパーではパスカルの原理を用いて更に数十倍もの大きな力を発生させているため、強い制動力が得られます。
ホンダ CRM250R(R)
動作原理
事前理解:ブレーキパッドがブレーキディスクを挟み込んで減速する
Step 1 : てこの原理でブレーキシリンダーを強く押す
リヤブレーキペダルをよく観察してみると、リヤブレーキペダルを踏む部分からリヤブレーキペダルの取り付け部分までの距離(力点から支点までの距離)は、リヤレーキペダルの取り付け部分からマスターシリンダーを押し上げる部分までの距離(支点から作用点までの距離)に比べて数倍になっています。このような設計により、てこの原理を用いてリヤブレーキペダルを踏む力の数倍をマスターシリンダーに伝えています。
「てこの原理」の応用例
実験をすると支点-力点間の長さが支点-作用点の長さの2倍であれば、得られる力は加えた力の2倍になることがわかる。
[引用] Wikipedia:てこ
例えば、リヤレーキペダルの取り付け部分からマスターシリンダーを押し上げる部分までの距離が2cm、リヤブレーキペダルを踏む部分からリヤブレーキペダルの取り付け部分までの距離が20cmの場合は、距離の比率が10倍ですので、ブレーキペダルを踏む力に比べてマスターシリンダーを押し上げる力は10倍となります。
Step 2 : パスカルの原理でキャリパーピストンを強く押す
通常、ブレーキキャリパー内ピストンの表面積は、マスターシリンダー(注射器のようにブレーキオイルを押し出す部品)内ピストンの表面積に比べて数十倍になるように設計されています。その理由は、パスカルの原理を用いて加えた力に対し数十倍の力を発生させたいからです。
「パスカルの原理」の応用例
ピストンにかかる力の大きさは面積に比例することがわかる。たとえば、2つのピストンの面積比を2:1にすると、大きいピストンには小さいピストンの2倍の重量の物体をおいて吊り合わせることができる。
[引用] Wikipedia:パスカルの原理
例えば、マスターシリンダー内ピストンの半径が5mm(ピストン面積は π x 半径5 × 半径5 = 25π)、ブレーキキャリパー内ピストンの半径が20mm(ピストン面積は π x 半径20 × 半径20 = 400π)の場合は面積比が16倍となるため、ブレーキシリンダーを押す力に比べてキャリパーピストンが押し出される力は16倍となります。なお、上記例はブレーキキャリパー内のキャリパーピストンは1つのみと仮定しています。
Step 1において、てこの原理を用いて10倍の力を得ており、更にこのパスカルの原理にて16倍の力を得ました。よって、ブレーキペダルを踏む力に比べてブレーキキャリパー内ピストンが押し出される力は160倍(10倍×16倍)になります。
このように、油圧ディスクブレーキは人間が操作して得られた力を数百倍も増幅してキャリパーピストンに伝え、そのキャリパーピストンがブレーキパッドをブレーキディスクに押し付けることで大きな摩擦力を発生させて、大きな制動力を得ています。